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Posted by 籠崎進 - 2009.09.24,Thu
―どうして人は 概念で 概念を決めるのだろう。


いちにちめ。

ある町に、みんなより少し背の高い女の子が居ました。
女の子はお花が大好きです。女の子は、鳥も大好きです。同じように、空も、海も、風も、大好きです。
でも、その女の子は、この町が大嫌いでした。
本当は女の子は、この町が大好きです。だけれど、今は怖くて、女の子はこの町のことが大嫌いでした。

女の子はずっと、たったひとつの綺麗な星空を見ながら、この町で過ごしてきました。今では、女の子の背はもっと大きくなって、高校生です。
でも、女の子には、一緒に学校に行くお友達が居ません。行きも帰りも長い長い道程を歩くのです。坂もあって、暗いところもある道を、女の子はずっとたった一人で歩くのです。
女の子は、学校に行っても、誰とも話しません。誰も女の子と話そうとしないのです。女の子は本当はとても優しくて可愛らしいのに、誰も女の子に近寄ろうとしません。
女の子も、周りの人たちに近寄ろうとも、一緒に話そうともしません。どうせ逃げられる、誰も一緒にお話なんてしてくれない。それが、女の子にはとてもよく解っているからでした。
女の子は一人でも特別に辛くはありませんでした。休憩時間に周りの人たちがみんなでお弁当を食べていても、羨ましくありませんでした。同じ授業を受ける人たちが集まって行くのを見ても、ちっとも羨ましくもありませんでした。
少女は何時しか、一人に馴れていたのです。寧ろ一人でいることの方が、誰かと一緒に居るよりも楽で、ずっと幸せなことだと思っているのです。
だけどそれは、とても悲しいことでした。
女の子は人の目を避けるようにして、放課後の教室を抜け出しました。
後ろから聞こえる声に、その荒れた手で耳を塞ぎながら。

女の子は長い道を歩きます。
毎日、毎日一人で歩くのです。
話し相手は誰も居ません。
だから女の子は、道端のお花を見ては、その可愛らしい声を掛けるのです。
「お花さん。今日も、誰とも話さなかったよ」
鮮やかなオレンジ色の空から吹く風が、お花を揺らします。答えるように揺れた花に、女の子はさみしげに微笑みました。
「誰とも、話さなかったよ。誰とも、目を合わせなかったよ」
女の子は花弁をそっと撫でて、小さく手を振りました。
そうして、またたった一人で、歩き出しました。

玄関に入っても、家に居るはずの母親は何も言いません。女の子も、ただいまとも何とも声を出しません。
靴を脱ぐと、女の子はすぐに自分の部屋に向かいました。
女の子は家族の愛を知りません。誰にも愛されたことがありません。誰を愛したこともありません。
母親と目を合わせるたびに、嫌な事を言われます。
女の子は毎日、実の母親に冷たい目で見られます。女の子は毎日、一人でご飯を食べて、一人でお風呂に入って、ずっと一人で部屋に居ます。
女の子にお父さんは居ません。女の子が物心ついた頃に、離婚して遠くの町へ行ってしまいました。
「こんな子は俺の子じゃない」と言って、女の子の知らない女の人と行ってしまったのです。お兄ちゃんもお姉ちゃんも、弟も妹も居ません。
女の子はずっと一人でした。
縫い包みも、お人形も、何もありません。プレゼントの一つも貰ったことはありません。
女の子は毎日、絵を描きます。可愛い絵を丁寧に、綺麗に描きます。だけれど、どんなに上手に描けても、すぐに捨ててしまいます。
どうせ、誰も見てくれないからです。描き終わった後に、絵を見て、何もかも嫌になってしまうのです。
少女は鉛筆を置いて、鏡を見ました。疲れきった、痩せたさみしい顔が映っていました。
女の子がその折れそうに細い指で、長い前髪をどかしました。

鏡には、まるで血のような、――真赤な目が映っていました。

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プロフィール
HN:
籠崎進
年齢:
31
性別:
男性
誕生日:
1992/11/14
趣味:
描き・書き
自己紹介:
秋刀魚の塩焼き食いたい。

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